なぜ鍼は効くのか?科学と経験から考える東洋医学

こんにちは。岩島鍼灸院の岩島です。

今回は、患者さんからよく頂く質問にお答えします。

「鍼って、なんで効くんですか?」

この問いはシンプルなようで、とても奥が深い。私は鍼灸師として20年以上臨床に携わってきましたが、改めてこの問いに向き合うと、東洋医学の奥深さと、自分自身の臨床経験の積み重ねが見えてきます。


東洋医学の視点から──「証(しょう)」に基づいたオーダーメイド治療

東洋医学では、「気・血・津液」や「五臓六腑」といった独自の概念を使って、体の不調の根本を探ります。たとえば、同じ「腰痛」でも、その原因が「冷え」から来ているのか、「疲労」から来ているのか、「感情のストレス」から来ているのかで、まったく異なる治療が必要になるのです。

このとき重要になるのが「証」という考え方。

  • 同じ症状でも原因が違えば、治療法も違う
  • 違う症状でも根本が同じなら、治療法が同じになることもある

これを**「異病同治」や「同病異治」**といいます。つまり、鍼灸は“症状”を見ているのではなく、“人”を診ているのです。


科学の視点から──交感神経・副交感神経のバランス

一方で、近年では現代医学の進歩により、鍼灸のメカニズムも徐々に解明されてきています。

鍼刺激は、皮膚や筋肉に存在する「感覚受容器」を通じて、脳や中枢神経に信号を送ることが分かっています。その結果、次のような変化が体内で起こると考えられています。

  • 自律神経の調整(交感神経の緊張が和らぐ)
  • 血流の改善(末梢血管が拡張される)
  • 内分泌系の調整(ホルモンバランスへの影響)
  • 免疫機能の活性化

これらは、西洋医学の「副交感神経優位」の状態を引き出すことで、自然治癒力を高める作用として説明されています。


実際の症例から──風邪をひきにくくなった患者さん

別のブログ記事でも書きましたが、当院の患者さんで、毎月のように風邪をひいていた方がいました。最初は「葛根湯がよく効くんです」とおっしゃっていたのですが、あるとき鍼治療に**「椎骨脳底動脈循環促進処置」**を加えてみたところ、なんとその後風邪をひく頻度が明らかに減ったのです。

この処置は「交感神経の過緊張をゆるめる」ためのものであり、免疫力を上げることに直結していたと考えられます。東洋医学的には「浮脉(ふみゃく)」という反応があるときに有効とされており、これは現代医学でいうところの自律神経の緊張とも一致します。


結局、なぜ効くのか?

それは**「科学」と「経験」の融合**にあると思います。

鍼灸は、

  • **理論に裏打ちされた伝統(経験医学)**と、
  • 少しずつ追いついてきた現代医学(科学)

その両者を組み合わせてこそ、最大の効果を発揮するのです。


最後に

私が尊敬する長野潔先生は、「東洋医学は経験の医学であると同時に、科学にも説明できる可能性を持つ」と言っています。

鍼灸の本質は、**“人間をまるごと診る”**ということ。

痛みや症状だけでなく、その人の体質・生き方・感情の動きにまで寄り添うからこそ、治る力を引き出せるのです。

「なぜ効くのか?」

その答えは、あなたの体にこそ眠っています。


ご感想やご質問がありましたら、ぜひコメントやご予約の際にお聞かせくださいね。

岩島鍼灸院
岩島信吾

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